ナキウサギの鳴く里づくりプロジェクト協議会の設立趣旨と目的

設立の経緯と会の構成

「ナキウサギの鳴く里プロジェクト協議会」は平成19年度に市民・研究者・行政の協力・連携による富良野市域並びに富良野地方のエゾナキウサギを象徴とした生物多様性の「調査活動」「教育普及活動」「保全活動」を推進する団体として結成されました。

富良野市域に生息するエゾナキウサギは、地理的な生息条件から「北見・大雪山山系の個体群」と「芦別・夕張山系の個体群」の2つに大きく分類することができます。前者は富良野岳周辺の山々に、後者は芦別山系北域と夕張岳周辺の山々に生息しています。特に後者の芦別・夕張山系の個体群については、環境省レッ ドデータブックの「絶滅の恐れのある地域個体群」に指定されています。しかし、本格的な現地調査は近年ようやく着手されたばかりで、ほとんど手付かずの状態にあり、生息地や分布域等の基礎的なデータが明らかにされていません。また、富良野市は2つの個体群を抱える地域であるにもかかわらず、情報の整理・発信がなされていないために、エゾナキウサギに関する市民の認識・理解が乏しい現状にあります。したがってその保全活動は、一部の人々の配慮のみに留まっています。

私たちナキウサギの鳴く里プロジェクト協議会は、これらの問題点に取り組むことを目的に、富良野市生涯学習センターボランティア友の会を母体として、会員は主に富良野の自然・環境関連の団体に属する一部の個人有志によって構成、会員のスキルアップを図りながら徐々に活動の輪を広げていきたいと考えています。したがいまして、事務局は当面の間、富良野市生涯学習センター内にある富良野市博物館に設置し、協議会の活動を行っていきます。協議会のイメージ図は次のとおりです。

協議会のイメージチャート

当面の目標

本協議会は平成19年より2年間、トヨタ財団様より助成を受けて事業を推進します。助成を受ける2年間は協議会の事業を軌道に乗せるための助走期間であり、この当面の目標を「短期目標」と呼び、これ以降の目標を「中期目標」及び「長期目標」として区分します。

1.調査活動の目標と内容

調査は次の2種類に分別され、この調査を並行して実施しますが、調査地のレベルが大きく異なることからそれぞれ区別されます。

A.夕張山系~芦別山系間の個体群分布調査(仮称:A調査)

B.市民レベルで実施するアクセスしやすい生息地での調査(仮称:B調査)
→協議会員のスキルアップによる人材育成を目指します

★短期目標:芦別―夕張山系間のエゾナキウサギの生息調査(仮称:A調査)を行い、本協議会の活動の基盤となるデータの集積に努めます。また学習会・現地観察会を行うことによってスキルアップを図り、協議会参加者による「市民調査」(仮称:B調査)を実験的に展開します。

★長期目標:市民を中心とした研究組織を確立し、継続的な調査・モニタリングを実施します。またA調査も継続的に実施し、データを積み重ねていきます。

2.教育普及活動の目標と内容

A.市民・児童への教育普及活動

ナキウサギの生態、生息環境とその自然史に関する学習を深め、環境保全のための自然との付き合い方やマナーを学ぶ環境教育プログラム及び観察会を実施するとともに、協議会の活動について広報します。その対象は主に富良野市民ですが、生息環地を有する富良野沿線自治体住民にも拡大して考えます。ただし、生息地へ過分な負荷をかけないよう注意します

B.人材育成

調査のための学習会、市民への環境教育プログラムの実施、調査参加などの経験を経て、ナキウサギの保全について知識を深める必要があります。このような人材の育成に努め、将来的の保全体制の構築を目指します。

★ 短期目標:市民に対する教育普及活動を実施するとともに、調査・保全活動を推進するための人材育成に着手します。また将来にわたって継続的にナキウサギ生 息地の保全活動を推進し、保全のあり方を行政・市民等に提案できる富良野の「ガイドライン」の作成を行います。なお、2年間は協議会員のスキルアップが急務です。

★長期目標:調査研究及び教育普及活動に対応できる人材の育成を行うともに、資格制度の導入を検討します。

以上の目標を掲げ、私たちの協議会は多くの方々のご協力を得ながら船出します。どこまでやり遂げられるか未知数ですが、目標に向かってマンパワーで頑張りたいと思います。